一緒に居らっしゃる筈はないと思っても、矢張り、何だか心配で。――其でも斯うやってお目にかかるといつも元気にして被居るから、安心のようだけれども。……」
 祖母や会田さんに、心配され、口説かれる程、自分に困ることはなかった。何と云ったらよいか、わからない。彼女等の力で、如何うして貰えることでもなし、一緒に歎けることでもなし。底には云い難い淋しさを沈め乍ら、自分の活力が、その打撃に堪えて居るいつもの快活さで彼女等に対すほか、自分には仕方がないのである。
 又、頭では、芸術に対する自分と彼女との、曖昧に出来ない理解の差が、はっきりと光って居る。
 けれども、十一月に入り、新年が近づくにつれ、自分のその冷静な頭脳の明るみは、次第に他の感情で包まれるようになって来た。
 仕方がない。彼女の解って呉れる迄、自分は自分の生活を、すっかり独りで営もう、と云う自足《セルフコンテンド》の感情は、やがて、此、淋しく離れ離れになった有様で、新らしい元旦を迎えなければならないか、と云う、淋しい孤独感となって来た。
 大晦日や元旦の朝を、自分は子供の時から、いつにも増して賑やかに、家族揃って歓び迎える習慣をつけら
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