うならいました。むずかしいです」
「ロシアの人のこころとチャールストンのリズム、ちがうでしょう」
 伸子も、ドーリヤにわからせようと片言の日本語になって云った。ドーリヤは、なおしばらく、せかせかとぎごちなく足を動かしていたが、
「本当だわ」
 ロシア語で、真面目な顔つきで云って足のばたばたは中止にし、両手をうしろに組んで、面白いことをさがし出そうとするように、秋山の室のなかをぐるりと歩いた。やがて伸子のよこにかけて羽織をいじくっているうちにドーリヤは、子供のとき両親につれられて、日本見物に行ったときのことを話し出した。
「何と云いました? あの温泉のある美しい山の公園――」
「どこだろう、ハコネですか」
 秋山が云った。
「おお、ハコネ。そこで、わたくし、一つの箱買って貰いました。小さい小さい板のきれをあつめて、きれいにこしらえた箱です、そして、それ、秘密のポケットもっていましたね」
「ああ寄木細工の箱だ――貯金箱ですよ」
 慎重な顔で内海が、きわめつけた。
「その箱、いまどこにあるの?」
 伸子がそうきくと、ドーリヤ・ツィンは目に見えて悄気た。両肩をすくめて、
「知りません」
 悲し
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