木道を歩いてゆく心持。伸子にはそれも興味ふかかった。
 トゥウェルスカヤ通りをアホートヌイ・リャードまで下り切ると食糧市場へ出た。切符制で乳製品や茶、砂糖、野菜その他を売る協同販売所が並んでいる。その歩道をはさんだ向い側に、ずらりと、ありとあらゆる種類の食品の露店が出ていた。半身まるのままの豚がある。ひろげた両脚の間にバケツをはさんで、漬汁がザクザクに凍った塩漬胡瓜を売っている。乳製品のうす黄色い大きなかたまりがある。蝶鮫《ちょうざめ》がある。リンゴ、みかんもある。卵をかごに入れて、群集の間を歩きながら売っているのは、大抵年をとった女だった。つぶした鶏を売っている爺がある。絶えず流れる人群れに交って、伸子のすぐ前を、一人の年よりが歩いていた。脚立《きゃたつ》をたてて、その上へ板を一枚のせて、肉売りがいる。その前へ、年よりがとまった。
「とっさん、素晴らしい肉だぜ。ボールシチにもってこいだ!」
 それはいい肉と云えるのだろうか。伸子の目に、その塊りは黒くて、何の肉だか正体がしれなかった。黙ったままじいさんは、よごれた指を出してちょいとその肉をつついて見た。
「え《ヌ》? どうだね《カーク
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