のマリア・グレゴーリエヴナは、すこし鼻のさきの赤いような顔で熱心に云った。
「佐々さんは、早い耳をおもちですもの」
 それにしても、伸子にはやっぱりここがノヴァミルスキーの家だったということが、意外だった。|ВОКС《ヴオクス》で話したとき、ノヴァミルスキーは、まったく第三者の感じだった。自分の妻、その妻の仕事、それを、あんなに、その表情さえも第三者として話した。ノヴァミルスキーは、マリア・グレゴーリエヴナがもって来た紅茶のコップにサジをさしたまま、そのサジを人さし指となか指との間でおさえてのむ飲みかたで美味そうにのみながら、
「革命博物館は見られましたか」
ときいた。
「ええ。見ました」
「あれは独特な意義をもっています。当分は、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]にしかあり得ない種類の博物館だと思いますね」
 ちょっと言葉を改めて、ノヴァミルスキーは、
「私は七年間、牢獄におかれました。アナーキストだったんです」
と云った。
「十月にレーニンに会って、二時間話しあいました。そのとき、私は自分のそれまでの思想をかえたんです。――発展させたんです――発展――おわかりですね」
 
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