フ新しい人間らしさにひかれるからでありながら、その一面では、やっぱりありきたりの常識のなかに描かれている俳優を対象においた気分だったということが、伸子にのみこめて来た。伸子は、心ひそかに自分たち二人の女をいくらかきまりわるく感じた。そして、改めて吉之助を友達として確信するこころもちだった。
「わたし長原吉之助が、いわゆる役者じゃなくてほんとによかったと思うわ」
「へんなほめかたがあったもんだな」
 素子が笑った。吉之助も笑った。伸子は、素子のその笑いのなかにやっぱり転換させられた素子の気分を感じた。素子は、もうすっかり自分ときりはなした淡泊さで吉之助にきいた。
「ところで、あなたの希望のようなひとって、実際にいますか」
「どうなんでしょう」
 彼としてどこに眼ぼしもないらしかった。
「なにしろ、歌舞伎には女形しかないんですから……」
 そこにも歌舞伎の世界の封建的な変則さがあるという口ぶりだった。

        四

 あくる朝十時ごろ約束のガーリンが吉之助とつれだって伸子たちの室へ来た。くつろいだ低いカラーに地味なネクタイをつけて、さっぱりした風采だった。ガーリンが芸術座の名優た
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