フ目下の実感にちがいなかった。
 伸子たちがスタディオに入って行ったとき、もう何回めかの、
「一! 二! 三!」
で、戸口からどっと入る稽古をしていた農民たちの六列横隊の動きは、どうしても足なみと速度がばらばらで、スクリーンの上にいっせいに展開し肉迫する圧力を生みださない。運動の密度が農民の感覚に理解されていないことが伸子にも見てとられた。
 中館とエイゼンシュタインとが素子を介して話している間、なお二度ばかり同じ合図で同じ失敗をくりかえした演出助手は、首をふってダメをだし、しばらく一人で考えていたが、やがて一本の長い棒を持ってこさせた。農民の群集の最前列の六人が、一本のその棒につかまらせられた。棒の一番はじを握っている奥の一人はそのまま動かず、あとの五人が棒につかまって大いそぎで扇形にひらいてゆく。従って舞台のはじ、カメラに近い側にいる農民ほど早足に大股に殆ど駈けて展開しなければならない。
 棒が出て、ボログダの農民たちにはやっと自分たちに求められている総体的な動作のうちで一人一人がうけもつ早さやかけ工合の呼吸が会得されたらしかった。三度目に棒なしで、
「さあ、戸口からどっと入って!
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