黷オてみえた。
ひいきがいう調子で、素子は中館に、
「吉之助、いくつです?」
ときいた。
「八ぐらいじゃないんですか」
「これからってとこだな」
「――吉ちゃんは、あれで考えてますからね、ここまで出て来たってことだけでも、歌舞伎俳優としちゃ謂わば千載一遇のことなんだから、おめおめかえっちゃいられないって気もあるでしょう」
吉之助のことを云っている中館公一郎の言葉の底に、計らず中館自身の映画監督としての気がまえが感じとられ、わきできいている伸子はひきつけられた。中館公一郎は、日本の映画監督のなかでは最も期待されている一人だった。
「若い連中のなかには、だいぶ千載一遇組がいるらしいですよ。吉ちゃんなんか、この際ベルリンあたりも見ておきたいんじゃないかな」
「そう云うわけだったんですか」
新しい興味で目を大きくした素子は、
「吉之助の今のたちばなら、出来ないこともないんでしょう。――行きゃいいさ」
好意のあらわれた云いかたをした。
二
吉之助のベルリン行きの希望とその実現計画について話すにつけても、中館公一郎は、歌舞伎が滞在しているという自然な機会のうちにモスク
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