れたように、
「ほんとうだ」
とつぶやいた。そして、すこし顔を赧《あか》らめた。
「ぶこちゃん、どうしたのさ」
「わたし?」
伸子は、何と説明したらこの気持がわかって貰えるかと、困ったようにほほ笑んだ。
「――つまり、こうなのよ」
その返事をきいてみんな陽気に笑った。素子が議論していることや、秋山の答えぶりの要領よさについて、伸子は決して無関心なのではなかった。むしろ、鋭く注意してきいていた。けれども、劇場でうけてきた深い感覚的な印象のなかから、素子のようにぬけ出すことが伸子の気質にとっては不可能だった。伸子の感覚のなかには、云ってみれば今朝から観たこと、感じたことがいっぱいになっていて、粉雪の降るモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の街の風景さえ、朝の雪、さては夜の芝居がえりの雪景色と、景色そのまま、まざまざと感覚されているのだった。伸子は、|М《ム》・|Х《ハ》・|Т《ト》の演出方法の詮索よりも、その成功した効果でひきおこされた人間的感動に一人の見物としてより深くつつまれているのだった。
一座の話が自然とだえた。そのとき、どこか遠くから、かすかに音楽らしいものがきこえ
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