ワっているのだったが、そのわけも、間に三月の保のことがあったとわかれば、おのずからまた別の角度で伸子に思いあたるふしもある。父の手紙によれば、三月の夜のガスのことは、家族のあらゆる人から完全に秘密にされていた。知っているのは保と父と母のみである、とかかれていた。多計代は、この秘密を伸子にたいして絶対に守ろうとしたにちがいなかった。多計代にとっては神聖この上ない保の秘密を、破壊的だと思われている伸子、物質的だと考える伸子には決してふれさせまいときめたのだろう。そのために一層手紙もかかなくなったと思える。
伸子は、もっとつよくも想像した。多計代はもしかしたら、三月の夜保のしたことに、姉の伸子の冷酷な手紙[#「冷酷な手紙」に傍点]が原因しているとさえ思っているかもしれなかった。保は、そんな風にはうけていなかった。雪のつもった大使館の外庭の菩提樹の下でよんだ保からのハガキを伸子はまざまざと思い浮べることができた。姉さんが遠い外国に生活しているのに、こんなに僕のことを考えていてくれたのに僕はびっくりした。そこには、保の柔かな心情が溢れていた。保が高校入学祝にこしらえて貰ったという温室の一つで、
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