フ不安は極度に高まり、二日夜は深更に到るまで和一郎と協議し、家じゅうを隈なく捜索せり。
よみ終った頁を一枚ずつ素子にわたしながらそこまでよみ進んだ伸子は、鳥肌だった。和一郎とつれだった泰造が、平常は活動的な生活のいそがしさから忘れている家のなかの隅々や、庭の茂みの中に保をさがすこころの内はどんなだったろう。伸子は、白い紙の上にかかれている文字の一つ一つを、父の苦渋の一滴一滴と思った。
三日の早朝、和一郎が念のためにもう一度土蔵をしらべた。そして、はじめて、土蔵の金網が切られていることを発見した。母の留守中土蔵の鍵は余の保管にあり。くぐりにつけられている錠はおろされたままで、くぐりごと土蔵の大戸を開けることの出来る場所の金網がきられ、それが外部からは見わけられないように綿密につくろわれていることがわかった。父と和一郎が土蔵へ入った。入ったばかりの板の間に、猛毒アリ、と保の大きい字で注意書した紙がおかれていた。地下室へ降りるあげぶたが密閉されている。そこにも猛毒アリ危険※[#感嘆符二つ、1−8−75] と警告した紙があった。
保はかくの如く細心に己れの最期のあとまでも家人の安全を考慮
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