ァ服の太い膝をゆすったり、紺絣の着物の膝をゆすっているときの保、柔かい和毛のかげをつけた若いおとなしい口元、重いぽってりした瞼の形、可愛い保の俤《おもかげ》は迫って、伸子はものをのみこむどころか息さえつまった。伸子の悲しみは体じゅうだった。その体に風が吹いても悲傷が鳴った。
喪服をつけるというようなことを思いつきもしなかった伸子は、相かわらず白麻のブラウスにジャンパア・スカートのなりで、素子の腕につかまりながら、ほとんど一日じゅう戸外で暮した。結局たれ一人、保が生きられるようにはしてやれなかった。この自責が伸子をじっとさせておかないのだった。ひとはてんでに、生きるようにして生きている。そのひと[#「ひと」に傍点]のなかに、兄の和一郎も姉の伸子も、父母さえもおいて保は一人感じつめたのだと思うと、伸子の唇は乾いた啜り泣きでふるえた。
伸子は、保の勉強部屋の入口の鴨居に貼られているメディテーションという小紙に、あんなに拘泥していた。いつだってそれを気にしていた。だけれども、それだからと云って自分がソヴェトへ来ることをやめようとはしなかった。自分の生きることが先だった。デーツコエ・セローの
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