Xク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]のホテル・パッサージにあったような実用的なデスク一つ、スタンド一つなかった。レーニングラード見学の期間が終ると、伸子も素子も、食事つきで勉強のできる下宿がほしくなった。デーツコエ・セローで、あんなにネツプ風でない下宿はないものだろうか。
東洋語学校の教授であるコンラット博士が偶然デーツコエ・セローの下宿の一軒をよく知っているという話になった。きいてみると、それは、あのプーシュキンの学校の前の家で、伸子たちが桃色のゼラニウムの小ざっぱりした綺麗さに目をひかれた旧校長の家だった。その教授の紹介で、伸子たちは学者の家からデーツコエ・セローのパンシオン・ソモロフの二階へ移った。
七月初旬で、伸子たちははじめの数日を一室で、あとは二人別々に部屋がもてた。食事のために出歩かないでよくなったことや、七ヵ月ぶりで自分一人の部屋がもてたこと、青葉照りの底へ沈んだような自然の奥ふかさなどで、伸子はレーニングラードへ来てから受けたいろいろの刺戟がデーツコエ・セローの暮しで日に日に自分のなかへ定着するのを感じた。落付いた気分になると、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、
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