景に伸子は感動した。ロシアがソヴェトになってから、芝居も小説も、それまでとすっかりちがったものになったということが実感された。場内をうずめている観客のなかには、一九一七年から二〇年までの間に、実際このパルチザン・エルシーニンの物語のある部分をその身で経験した男たちがどの位いることだろう。革命のためにたたかったすべてのことの成りゆきは、舞台に殆どそっくりだが、最後に命を全うして、今夜この劇場に坐り、それを観ているところだけは違うという男たちもあるにちがいない。よしんばそれぞれ部署がちがい、したがって経験の内容に多少の相異はあったにしろ、一九一七年という年、その十月という月に、勇気と恐怖と、涙と歓喜の高波をくぐったすべての男、そして当然女も、みんな少くとも一篇だけは、自分たちの物語をもっているにちがいない。『装甲列車』は、これらの人々の、人生に深く刻みつけられている「その人たちの物語」に向って語りかけているのではないだろうか。|М《ム》・|Х《ハ》・|Т《ト》の俳優たちは、こんなに見事に『装甲列車』を演じて、観客たちを満足させているだけではなく、観客の非常に大部分の人たちに、かれらの奮闘の
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