ハな彼の」に傍点]手拭かけ。特別な彼の[#「特別な彼の」に傍点]葡萄酒コップ。そして、彼はいつでも机の上へバラで小銭をちらばしていた。
「あのひとは何故、小銭をそうやって出しておかなけりゃならなかったでしょう――わたしがとるのを待っていたんです。わたしをためしているのがわかっていたんです。朝と夜の時間に、あのひとは何度わたしを呼びたてたでしょう。可愛いニューラ、どうぞこれをしておくれ。親切なニューラ、あれをしなさい」
ニューラは憎悪をこめて、「可愛いニューラ、どうぞこれをしておくれ」「親切なニューラ、あれをしなさい」と云うときの山羊髯のオルロフという男の口真似をした。
「口でそう云いながら、眼はいつだってわたしを睨んでいたんです。いつだって――笑うときだって、あのひとは唇でだけ笑ったんです」
伸子は、時計を見て、立ちあがった。
「ニューラ、わたし正餐《アベード》のために出かけなくちゃならないわ」
ニューラは、自分が用もないのに伸子のところに来ていたことが急に不安になった風で、
「|お嬢さん《バリシュニヤー》」
哀願するように伸子を見た。
「わたしがこんなこと話したって、どうか奥
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