迢Aると云っていた。
伸子は、長テーブルの端三分の一ばかりのところに食卓をこしらえつづけた。ひろげた紙の上に、大きなかたまりになっている砂糖を出して、胡桃《くるみ》割で、それをコップに入れるぐらいの大きさに割った。秋山さんたち、どうしているでしょうね、と云い出した伸子の心持には、アストージェンカではじまった生活の感情からみると、パッサージの暮しが平面のちがう高さに浮いているように思えるからだった。ちょいとした事実、たとえば、アストージェンカの台所では、サモワールが立てられたことなんか、まだ一遍もなかった。それさえ、ロシアと云えばサモワールと連想していた伸子にとって新しい生活の実感だった。現代のモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の人々は毎日誰だってありふれたアルミニュームのやかんで、ガスだの石油コンロだので格別かわったところもなく湯をわかしているのだ。色つけ経木の桃色リボンで飾られたりしてはいない自分のうちの食堂でたべ、さもなければ、この頃伸子たちがちょくちょく行くような、街のあんまり小ざっぱりもしていない食堂《ストロー※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ヤ》で酢づけの赤キ
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