H」
「四つめ」
 クレムリンをすぎると、左手の小高い丘の雪の上に、金ぴかの大きな円屋根と十字架をきらめかして建っている大きな教会があった。その停留場で伸子たちは電車を降りた。
「おや、まるでこりゃ並木道《ブリ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ール》の根っこじゃないか」
「そうなのよ!」
 亢奮している伸子はさきに立って、すぐその右手からはじまっている並木道《ブリ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ール》とは反対の方角へ折れた。茶色外套をきた素子は、鞣帽子をかぶって、伸子と並び歩道の外側をついて来る。その歩道を一ブロック行った右手に、板囲いが立っていて、木戸があいていた。それは、まだ未完成な普請場によく見うけられるような板囲いと木戸だった。板囲いの上に、「この内に便所なし」と大きく書いたはり紙がされている、伸子は、わざと素子に予告なしで急にその木戸を入った。
「なんだ、こんなとこを入るのか」
 素子もついて木戸の中へ入ると、樽だの古材だのが雪の下からのぞいている細長い空地があって、そこをぬけるとかなりひろい内庭へ出た。雪の上に四本黒く踏つけ道がついている。コンクリートの新しいしっ
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