ノ云いあらわされている文句のなかに、保が、姉・弟としての自分たちの関係について改めて感じなおしている気持が、はっきり伸子につたわった。
「姉さんが温室について書いてよこしたことは、もちろんただ僕を責めたり叱ったりしているのではない。また、温室をこしらえて下すったことを非難しているわけでもない。僕にそのことはよくわかる。姉さんは、僕に、もっとひろい社会の関係を知らそうとしただけなのだ」
 伸子は、涙ぐむようになった。保の書いている調子は重々しく真面目で、そこには、姉である伸子のいうことをちゃんと理解しようとしている心が滲《にじ》んでいるばかりでなく、保自身、自分のうけとりかたの正当さを、周囲に確認させようとしてつよくはりつめている意志が感じられた。保の書きぶりは、伸子のかいたあの手紙一通のために動坂の家の食堂でまきおこされた論判の光景を思いやらせた。
「僕は温室について姉さんの考えるようなことは一つも考えていなかった。これは大変恥しいことだと思う」
 最後の一行のよこに線が引いてあった。字を書いているのと同じ細いうすいペンの使いかたで、これは大変恥しいことだと思う[#「これは大変恥しいこ
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