オた。――そう思うでしょう?」
 ブロンナヤの通りを出はずれて二股になったところで素子が雪の鋪道に足をとめた。
「ここまで来たんだから、ちょっと大使館へよって手紙見て行こうか」
 部屋を見に行った家の裏がわぐらいのところが、丁度大使館の見当だった。マリア・グレゴーリエヴナはそのまま真直ニキーツキー門から電車にのって帰るために行った。
 二人きりになって、二股通りを裏がわにまわった。伸子が口をききはじめた。
「珍しかったわねえ!」
 伸子はそう云って深く息をついた。
「フランス語――どうだった?」
「――ありゃ、妾だね」
 断定的に素子が云った。
「男をおかないのは、世話しているやつがやかましいからさ。あんな、うざっこい家にいられるもんか」
「あのうちにいたりしたら、日に何度娘をほめなけりゃならないかわからないわ」
 素子は、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]でああいう女を囲ったりしている男の生活というものへ、より多く興味をひかれるらしかった。
「あの女の様子じゃ、男はまさか政治家じゃあるまい。所謂実業家というところだね」
「実業家って――あるの? ここに」
「トラストだのシン
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