ェトゥウェルスカヤ通りをホテルへ帰って来る頃には、もうモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の街々に灯がはいった。歩道に流れ出している光を群集の黒い影が絶間なくつっきって足早に動いている。そのなかにまじっていそぎ足に歩いていた伸子は、ふと、トゥウェルスカヤ通りの見なれた夕景が、霧につつまれはじめたのに気づいた。日本の晩秋に立ちこめる夕靄《ゆうもや》に似て、街々をうすくおおう霧にきがついたとき、もうその霧は刻々に濃くなって、商店の光もボーッとくもり、歩道の通行人もさきの見とおしが困難なくらいになって来た。大通りの左右に並んだ高い建物のきれめでは、煙のように灰白色の霧が流れてゆくのが見えた。伸子はモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で、こんな霧のなかを歩こうとは思いがけなかった。急に見とおしのきかなくなった街をいそぐ伸子の気持には、外国の都にいるらしく、孤独の感じがあった。
 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来て暮したふた月ほどの間、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の人々に対する伸子の一般的な信頼と自分に対する信頼とを、動かされるような目に会っていな
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