qは、どんなしっかりした立派な発音でヤー ニェ マグウ ガバリーチ パ ルースキー(わたしはロシア語は話せません)と云ったというのだろう。いまよりもっとひどいフニャフニャ にぇ まぐう で云ったにちがいなかった。それでも、あの会場に集っていた二三百人の男女は、瞳をそろえて、下手なロシア語を話す体の小さい伸子を見守り、その努力を認め、声をかけて励してくれる者もあった。あの人々が、ポリニャークに掬い上げられたりしている伸子をみたら、どんなにばかばかしく感じるだろう。そんな伸子に拍手をおくった自分たちまでが、同時にばかにされたように感じるだろう。伸子はその感情を正当だと思った。そして、あの人々に、このいやさを訴えたいこころもちと半ばして、訴えることさえ愧《はずか》しいと感じる心があった。伸子はこの意味のはっきりしない不愉快事を素子にさえ、話す気がしなかった。
ホテルへかえりつくと、素子も秋山も、浅い酔いがさめかかって寒くなり、大いそぎで熱い茶を幾杯ものんで、部屋部屋にわかれ、じき床に入った。
八
あくる日、臨時にマリア・グレゴーリエヴナの稽古の時間が変更になって、伸子
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