ッ出して、カフスのなかへしまい、スナップをとめながらまたもとの室へ戻ろうとしているところへ、むこうからポリニャークが来かかった。あまりひろくもない廊下の左側によけて通りすがろうとする伸子の行手に、かえってそっち側へ寄って来たポリニャークが突立った。
 偶然、ぶつかりそうになったのだと思って伸子は、
「ごめんなさい」
 そう云いながら、目の前につったったポリニャークの反対側にすりぬけようとした。
「ニーチェヴォ」
という低い声がした。と思うと、どっちがどう動いたはずみをとらえられたのか、伸子の体がひと掬《すく》いで、ポリニャークの両腕のなかへ横だきに掬いあげられた。両腕で横掬いにした伸子を胸の前にもちあげたまま、ポリニャークは、ゆっくりした大股で、その廊下の左側の、しまっている一室のドアを足であけて、そこへ入ろうとした。その室にはスタンドの灯がともっている。
 あんまり思いがけなくて、体ごと床から掬いあげられた瞬間伸子は分別が消えた。仄暗《ほのぐら》いスタンドの灯かげが壁をてらしている光景が目に入った刹那、上体を右腕の上に、膝のうしろを左腕の上に掬われている伸子は、ピンとしている両脚のパ
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