煤u頂いた」に傍点]のではなかったのよ。自分たちで自分たちのものとしたのよ」
 はるかに海をへだたっている保のところまで、勁《つよ》いひとすじの綱を投げかけようとするように、伸子は心いっぱいにその手紙を書いた。
「わたしたちは、人間として生きてゆく上に、美しいことに感動する心を大切にしなければならないと思います。美しさに感動して、そのために勇気あるものにもなれるように。保さんはそう思わない? 花つくりの美しさは、それをうちの温室で咲かせてみせる、という主我的な心持にはなくて、あの見ばえのしない種一粒にこもっているすべての生命の美しさを導き出して来る、その美しさにあるんですもの」
 保むけのその綱が多計代の目の前に音をたてておちることをはばからないこころもちで伸子は手紙を書き終った。
 厚いその手紙のたたみめがふくらみすぎていて封筒がやぶれた。おもしをかってから封することにして、伸子は四つ折にした手紙の上へ本や字引をつみかさねた。
 丁度そのとき、素子が勉強をひとくぎりして、椅子を動かした。
「あああ!」
 部屋着の背中をのばすように二つの腕を左右にひろげて、素子は断髪のぼんのくぼを椅子
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