聶ルのふくらみに似たまるみをもっている。これが、高等学校の最上級になろうとしている二十歳の青年の手紙だろうか。来年は大学に入ろうという――。保は、そのよせ書きの中で保だけまるで一人だけ別なインクとペンを使ったのかと思えるほど細い万遍なく力をぬいた字で、こうかいていた。「僕が東京高校へ入学したとき、お祝に何か僕のほしいものを買って下さるということでした。僕には何がほしいか、そのときわからなかった。こんど、僕は入学祝として本式にボイラーをたく温室を拵《こしら》えて頂きました。これこそたしかに僕のほしいものです。」そして、保は、簡単な図をつけて温室の大きさやスティームパイプの配置を説明しているのだった。
 動坂の家風は、すきだらけであったが、親に子供たちが何かしてもらったときとか、見せてもらったりしたときには、改まってきちんと、ありがとうございました、と礼を云わせられる習慣だった。言葉づかいも、目上のものにはけじめをつけて育ったから、二十歳になった保が、こしらえて頂いたという云いかたをするのは、そういう育ちかたがわれしらず反映しているとも云えた。しかし、保は小学生の時分から花の種を買うために
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