スついている一家の旅姿を、伸子はせつなく思うのだった。
 泰造の、いわゆる英国紳士らしい常識、良い判断とよばれているものが、このいきさつに関して一向はたらきをあらわしていないようなのも、新しく伸子を考えさせることだった。泰造はすっかり、多計代の企画にしたがっているだけのように思える。保が死んだ失望と歎きは、泰造の心もちを、そんなにうちくだいてしまったのだろうか。多計代のいうなりにする、ということの中に何か泰造の言葉にあらわさない保への供養があるのではないだろうか。ナポリで、上陸しない船の上から街の灯を見て泰造が泣いた、というみんなの話は、伸子の胸をさしとおした。みんなの病的に過敏にされている感情と、泰造の神経のつかれが感じられて。
 話したかったことを、ともかく話しきったという様子で、タバコをふかしはじめた和一郎に、長い沈黙ののち伸子はぽつり、ぽつり云った。
「何しろ、うちはむずかしいうちなのよ。小枝ちゃんだって、姪とお嫁さんと、こうまでちがうもんだっていうことは思わなかったでしょう? 佐々のうちには、たしかに特別つよく特徴があらわれているんだけれど、つまりは日本の旧い家族というものの考えかたよ、ね。それに日本の中流というものの経済的な貧弱さよ、ね」
 デュトに住んでいる画家の磯崎恭介とその美しくて忍耐深い妻の須美子が、故国の親との間にもっている辛い関係にしろ、佐々のうちでもめている事情の別の一面なのだった。
「外国へ出ると、誰でも一応日本のいろんなことから自由になったように思うし、自由にしていいはずだと思うから、矛盾がひどくわかって来るんだわ。自分の国で窮屈な思いをしている国の人ほど、外国へ出ると、外国は自由だと思ってのびようとするのよ。だけれど、ここでだって、セイヌ河からみもちの若い女の溺れた死骸が毎日あがっているのよ。新聞でみてるでしょう? 木炭ガスで自殺している貧しい親子があるわ。あなたがただって、もうどうせここまで来てしまっているんだもの、できるだけ智慧をはたらかせて、生活のいろんな面のなかから自分たちの方針を立てて行かなくちゃ。いま、和一郎さんが腹を立てているのも、もっともだけれど、だって、怒るために、何もパリまで来たわけじゃないんでしょう。ねえ、小枝ちゃん」
「わたしは、正直なところ、お兄さまがおこるのさえ、やめて下すったらと思うの。わたし、背中のぬけ
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