oによろけながら笑って、叫んで、紙ぎれをぶつけあって、見も知らない男女がだきあって踊った。夜じゅう眠らないでニューヨークの下町に溢れた群集は、どの顔も異様な興奮で伸子にとってはみにくくおそろしかった。征服欲の満足と歓喜で野蛮になっている群集の相貌というものを、伸子はそのときはじめて見たのだった。それからひきつづき伸子は心のうちに深い疑問をめざまされたものの目色で、次第に虹の色をあせさせながら実利の冷たさにかたまってゆく人道主義的な標語と、ニューヨーク・タイムズにあらわれる兇猛な辻強盗《ホールド・アップ》の増加と、ヨーロッパから着く船ごとにエリス・アイランド(移民検疫所)へおくられるおびただしい戦争花嫁と戦争赤坊の写真を見たのだった。伸子が痛感したのは、世界大戦について最も厳粛な感想をもっているのは、必ずしも平和克復という舞台の上でいそがしくしゃべっている人々ではないということだった。夫や愛人や父をもう二度とかえらぬものとして戦死させた家族の思いは、大戦を通じてその富を益々ふくらませた「永遠の繁栄」の、厚かましいほどの溢れる元気とは、おのずからちがったしらべをもって戦後というものを生きている。そのことを伸子は感じずにいられなかった。得意と、偽善に気づかない一人よがりで生きているものへの反感が、伸子の場合には自分の育った家庭の空気への反撥ともつれ合った。佃と結婚するようになって行った伸子の気もちは伸子自身がそれほど自覚していなかったにしろ、もえる大気のように不安定にゆれていた一九一八年の秋からのちの雰囲気ときりはなせないものだった。
「わたしは戦争ってものは、むごたらしいものだと思うの」
なお苦しげなまなざしを津山の眼の中にすえたまま伸子がつづけた。
「そして、悪いことだわ。一番わるいことは戦争で得をする人間に限って、決して自分で戦争しないですまして来ていられた、ということよ。津山さん、そうお思いにならない? そして、戦争なんて、ほんとにひどい間違ったことだっていうことを決して正直に認めようとしないことだわ。むき出しの資本主義の病気だのに。愛国心だの、正義だのって――何て云いくるめるんでしょう」
伸子はつきささるような口調になって行った。
「もし、まだ戦争がしたりないっていうんなら、こんどこそ、あなたのおっしゃる『モルトケ戦術』で儲けている人たちだけの間でやってもら
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