アとは明白です。――ルナチャルスキーはインテリゲンツィアよ。レーニンだって。マルクスだって、インテリゲンツィアよ」
 もし革命になったら、というような前提で話すことさえ、伸子にはうけ入れられなかった。伸子は現在の自分が革命家というものであると思っていなかったし、将来そういうものになるとも思っていなかった。しかし、人類の歴史の前進という意味で、伸子はどういう過程でどう現れるのかはわからないながらも、革命というものについて、うけみにばかり感じているのではなかった。でも、それは伸子の心の奥の奥にひそめられている小さくて熱いものだった。議論の中で話す種類のことでもないのだった。
 黒川隆三はしばらくだまって、ひろい外気の中へタバコの煙が消えてゆくのを目で追っていたが、そのうちに自分の心の中の重点を一つところからもう一つのところへおきかえた風で、
「なかなか、頑強ですな。おどろきましたよ」
 こんどは声を立てない笑いかたで笑った。
「もっとも御婦人てものは、一旦こうと覚えこまされると、あたまが単純だからなんでしょうな、なかなか理性的に方向転換できにくいものと見えますからね」
 さっと手をのばしてそういう黒川のネクタイをつかむように、
「とうとうそれを出したね」
と素子が云った。そして、棗《なつめ》形のきめのこまかい顔を上気させた。
「黒川君のまけだよ。男が女と議論して、それを出したら、白旗だ。――認めませんか」
 言葉の上では冗談のようでもあり、黒川に迫っている素子の眼の表情のうちには冗談でない真剣さも閃いている。
「なにしろ二対一だからね」
 態度をあいまいにして、黒川は譲歩した。
「外国じゃあ、あらゆる場合に御婦人を立てる習慣ですからね」
「――そんなことじゃないさ!」
 三人とも三人の思いでだまりこんだ。そのままなおしばらくはそこで休んでいた。
「そろそろ行きましょうか」
 そう云いだしたのは黒川だった。三人並んでカール・マルクス館の廻廊をぬけ、またシュミット爺さんが住んでいるというドアのわきを通りがかった。けれども、黒川はもう一度そこをノックして見ようとはしなかった。みんなは入りまじった音で砂利をふみ、表門を出た。ウィーンもこの辺の労働者街になると歩道が未完成で、歩くだけの幅にコンクリートがうってあるのだった。

        六

 予定どおりにウィーンを立って、
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