W2]東京間の電報往復にさきを越されてやっと三月三十日ちかくなってついた多計代からの二度目の部厚い手紙を半分ばかり読んだとき、伸子はそういう疑問にとらわれた。手紙の最後の頁をみると、二月二十一日夜と、多計代がそれを書いた日づけが入っている。素子からのしらせで伸子の病気を知り、胸をうたれ、と言って来た一回目の手紙は、いつごろ出したのだったろう。伸子は枕もとのテーブルから紙ばさみをとって、しまってあるその手紙を出してみた。それは二月五日の日づけだった。二つの日づけをみくらべて、伸子は、ものすごいスピードだと思った。たった二週間たらずのうちに、田舎の家へ行くさえも一騒動の多計代がこれだけのことをきめてしまった。いかにも多計代らしい一図さ。情熱的な強引。動坂のうちににわかにまきおこされた旋風状態が察しられるようだった。間に、和一郎と小枝の結婚式までさしはさまれて。
 でも、その和一郎と小枝との結婚について、新しく着いた多計代の手紙の上にあらわされている感情は、期待とちがう沈静、冷淡とさえうけとれる調子で伸子を意外に思わせた。このたびいよいよわれわれ外国行につき、和一郎と小枝の法律上の手続が必要になったから、来月十四日を吉辰として挙式のことに決定。母親のこころは、はかりしれない慈愛をもってこの若い二人の前途を祝福しようと、それぞれ準備中です、とかかれていた。この調子は事務的だった。どことなし、われわれ外国行につき、必要だということが主眼で和一郎と小枝の結婚式は行われることのような感じを与える。「ああ、でもこの母が、出入りのものの祝儀の言葉に何げなくほほ笑んでいる、その胸のうちを何人がわかってくれるでしょう。神となりし吾子は知るらんわが心、泣きつつも笑み、笑みつつも泣く。」
 読みながら伸子は暗さを感じ、危惧をおぼえた。ここでは、若い二人に与える祝福という表現をおおうもっとリアルな雲が湧きたっている。母がしんから和一郎と小枝の結婚を歓迎していない感じがむき出されていた。伸子には書いてよこさない何かの考えを多計代としてもっている。そしてそれは彼にしかわかってもらえない、とされているのだった。
 伸子は唇を酸っぱさで小さく引緊めたような表情になりながら読みすすんだ。結婚式は親類の者ばかりでごく内輪に行い、おなじ顔ぶれで星ケ岡茶寮の披露をやるとかかれていた。予定されている客の顔ぶれを
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