g織は御承知のとおり大きな大衆組織で、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]市ばかりで数万の少年少女がそれに属しています。――その小僧がピオニェールであることも事実であり、同時に職業的ダームスキーであることも事実かもしれません。――残念ながらこれは、過渡期の社会としてあり得ることです」
 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来た当座はすり[#「すり」に傍点]にもあわないで、一年たったとき念入りなごまのはい[#「ごまのはい」に傍点]にたかられたということは、伸子に自分たちの生活態度をいろいろと考えさせた。劇場の外套あずかりどころで、素子が外套のポケットから札束を出したりした。それが間違いのもとだったのだが、そんな油断は伸子たちのどんな心理からおこったことだったのだろう。伸子も素子もモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で働いて、それで取る金で生活しているというのではない。その上、ルーブルが円よりやすくて、換算上、日本の金の何倍かにつかわれている。素子と伸子のうかつ[#「うかつ」に傍点]さは、都会生活になれない人間の素朴なぼんやりさが原因なのではなくて、その土地で働いて生活しているのでない外国人がいくらか分のいい換算率に甘やかされている、そのすきだということが伸子には思われるのだった。
 素子の節倹は、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へついた当座からかわりなく、伸子たちはいまでも、気のかわった贅沢な料理をたべに、サヴォイ・ホテルの食堂へ行くというようなことは一ぺんもしなかった。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]としてはたかい砂糖菓子さえ滅多に買わなかった。そういう風なつつましさでは、多くの実直なモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]人と同様なのに。――あの札束が、かりに素子の月給であったらどうだったろう。もしくは、伸子の原稿料だったら――いずれにせよ二人はもっと慎重だったにきまっている。
 ルーブルと円との換算率ということも、改めて考えてみれば、伸子にとっては一つの自己撞着だった。日本の円に対してルーブルが低い換算率をもっているということは、日本よりソヴェトの方が、一般的に社会的信用がないことを意味している。でもそれは、日本のどういう条件に対してソヴェトの信用がより少ないのだろう。ソヴェトの大多数の人々にとっては、ソヴェ
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