ソにそんな風に思いこませるように応待をした。まるで素朴な外見で、自分のするべきことをよく知っていて、そのやりかたに、気持のさっぱりした洗濯上手の女のような自然の練達と確信がそなわっているサラファンのひとが、本当の責任者だったということは、すこし強く云えば、伸子に、ソヴェトというものに対する信頼をとりもどさせた。
「あなた気がついた?」
 がったん、がったん、と古びたレールの上ではずむ電車の中で、伸子は籐《とう》の座席に並んでかけている素子に云った。
「白黒さんが、わたしたちの主任です、と云ったときの、あの調子! なんてデリケートだったんでしょう。まるで、あのひとが間にあったのが残念みたいだったじゃないの」
「あれで、白黒の方がきっと大学ぐらいでているんだ。だからいやんなっちゃう――」
 翌日スモーリヌィへゆき、また次の日もゆき、ゆくたびに伸子はアンナ・シーモヴァというそのサラファンのひとにつよくひかれた。アンナ・シーモヴァは伸子よりも五つ六つ年上らしかった。一九一七年からの党員で、革命のときは働いていた工場のある地区ソヴェトの仕事をしていたということだった。いつみてもとりつくろわない風で、アンナ・シーモヴァは動きも気持も自然だった。彼女のうちにきわだって感じられるのは精神の均衡で、あっさりしたユーモアと具体的なポイントのつかみと一緒に、人に自信をめざませ、働かせ、それを愉快に感じさせる力がアンナ・シーモヴァのなかにある。
 一番おしまいにスモーリヌィへ行ったときのことであった。レーニンの室を見せて貰って帰りぎわに、伸子たちはもう一遍アンナ・シーモヴァのところへよった。彼女は室にいなかった。伸子たちが帰りかけて、三階の踊り場まで降りて来たとき、下からのぼって来るアンナ・シーモヴァに会った。伸子たちは、ほんとに心持よく多くのことを学んで過したスモーリヌィの四日間について礼を云った。
「あなたがたが満足されたのは、わたしもうれしいですよ」
 そして、伸子たちが秋まではレーニングラードに滞在する予定だと云うと、
「せいぜい愉快なときをおもちなさい、秋にまたお会いしましょう」
 そう云ってさようならをしかけたが、アンナ・シーモヴァは、急に伸子と握手していた手をそのままとめて、
「この講習会がすむと、わたしも休暇をとるんですよ」
と云った。アンナ・シーモヴァはうれしそうにそう云
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