_付き片仮名ワ、1−7−82]ァスをもってもどって来た。彼女は電燈をつけた。そして、その新しい光の下に、八号ばかりの自分の絵を置いた。空いている椅子の一つを、伸子たちから適当な距離にはなして、その上に。
「ホノルルの景色です」
 須美子も、伸子たちのわきに立って一緒にその風景を眺めた。
「いいじゃないですか」
 素子がほめた。
「ホノルルって、こんなに、きれいなところなのかな。みずみずしいんだなあ」
 須美子が描いているのは、風景としては奇抜なところのない自然のひとすみだった。けれども、碧《あお》い遠くの海のきらめき、その上の白雲のある空。ちらりと見えている砂地と前景の樹木。龍舌蘭のような草の大きい白い花房。軟かく、みずみずしく、光にあふれてそのひとすみの自然の美しさがとらえられている。伸子はその絵を見て、おどろいた。エジプトの彫刻にある女のように、まじめで端正な表情をうごかさない、口かずのすくない須美子に、こんなに柔軟自在で生命感のつよい表現力があり、大胆な色彩の感覚が潜んでいることをおどろいた。
「これは、やっぱりホノルルですけれど――街の方」
 棕梠の並木に沿って、明るい岱赭色の道がなだらかに彎曲しながらのびていて、そこを走り去っている自動車のうしろが見える。近いところの白壁の家、その窓々の日除け、単純な筆致の画面からも、伸子をうつのは愉悦の感情だった。その光の下に、それらの物体が存在し、それを見ていることのたのしさに鳴っている須美子の感受性がある。最後の一枚はホノルルの公園のベンチのあたりを中心にした風景だった。遊んでいる子供。ベンチにかけている黒服の老婆。花の咲いている花壇。画面には、その色のまま手にすくわれて来そうに明るくて芳醇な空気があった。どの絵も、須美子の第一印象がそれらの景物をとらえた瞬間の実感的なディフォルメがあった。
「須美子さん、あなた、もっともっとお描きにならなけりゃ!」
 伸子が、須美子の背中へ手を当てて前へ押し出すように心をこめて云った。
「あなたは、描ける方なのに。――こんなに表現なさるのに――ホノルルでお描きになったきり?」
「ええ。こっちへ来て、いろいろえらいひとの作品をみたら、わたしなんか、こわくなってしまって――」
「えらいひとはえらいひとよ。あなたはあなたじゃないの、須美子さんは、たった一人しかいないのよ」
「――」
 ふ
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