フは、女の肉体とかその線とかいうものに対するパリのデザイナーの感覚だった。こういうデザインをするのは女ではない。伸子は感興をつかまれてそう考えた。男が、その感覚の上ではっきり女というものを肉体と精神で意識して、その女を活かし、発揮させ、変化あらしめ、より女として表現するために、こういう腕環のような女の装身具は、重々しく、つよく、むしろ女の外から、女の柔かさをひきたてるものとしてつくっているのを、面白く思った。パリの婦人用家具が女の体の曲線にそっていて、装身具の小物類は女の曲線へのアクセントとして対照的な角度から、美しさをひきたてるように考えられている。日本の有名な真珠商のデザインが、日本の女の服装との関係もあってだろうが、いつも女の線にくっついていて、頸飾りや指環などのようなものには、線のしまりのなさと調子の鈍さが目立っていた。フランス人の趣味と日本人の趣味とは似ていると云いならわされていることへの不承知が、また伸子の心に湧きおこった。そこには、女として、日本の男への不承知の感情もひそんでいるのだったけれども、何と妙だろう――伸子は、銀灰色の絹びろうどのさざ波の上に耀《かが》やいている一個の腕環を見つめながら思った。フランスでは女がこんなに美しかるべき生物として理解されていると云っても、それは幾百万もいるフランスのどの女のことなのだろうと。
 黒人の舞姫のジョセフィン・ベイカアは素晴らしい裸で、そのはだかの輝きをより甘美にするために葡萄の房の中に体をひたすそうだが、彼女にそうさせているのは香水王のコティであり、コティの財閥はフランスのファシストの親分の一人だった。パリへ来て間もないとき伸子たちはメトロのなかで、買物籠を腕に下げた黒人女とパリ女とが喧嘩をはじめて、パリの女がいきなり平手で黒人の女の頬をぶったのを目撃した。走っている地下鉄《メトロ》のよごれた車内をてらすレモン色の昼間の電燈と動揺の中で、水色のエプロンをかけた黒人の女の艷のぬけた煤色の顔は、白眼を血走らせて怒った。紫っぽい灰色の厚い唇が、黒人のフランス語をほとばしらせた。誰がその女の喧嘩をまじめにあいてにしていたろう。次の駅でドアがあいたとき、腕組みをしてドアのわきに立って喧嘩を見ていたソフトの若い男が、伸子にわからない言葉を大きい声で早口に云いながら。
「そら《ヴォア・ラ》!」
 黒人の女を、開いたメト
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