ェパリ地図」をハンド・バッグの下にもって。ある日はエトワールの凱旋門をふりだしに、あるときはルーヴルの美術館からリヴォリ・マデレーヌへと。ブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールの午後は、どこもかしこも外国人で溢れていた。六月はじめのマロニエの木蔭のこころよい歩道の上にも、キャフェのテラスも。
グラン・ブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールの角のキャフェ・ド・ラ・ペイのテラスに休んで街を眺めていると、伸子たちの前を、濃い新緑につよいコントラストで異国的な情緒を漂わせながら、アラビア人が純白の寛衣のかげから黒檀の皮膚を輝やかせて歩いて行った。柔かなココア色のソフトを粋にかぶって、淡い肉桂色の背広を着たスペイン人の男が、※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]レンチノ風の長いもみあげを見せびらかすように気取ってゆく。シュ、シュと特徴のある語尾を響かせながら早口に喋りつづけて二人のアメリカ婦人が通りすぎた。多彩な織るような人波にまじって、お仕着せのメッセンジャー・ボーイ。黒服に白前掛のブルターニュ風の婆さん。犬をつれてアイ・シャドウと口紅の濃い女。二人ともそっくりおそろいの白い毛皮《ファー》をはすかいに肩にかけ、つばの深い帽子のかげから隈どられた眼でキャフェのテラスへながしめをくれながらしなやかな体をなおしなやかそうにねってゆく女づれ。やがて歩道の、テラスから遠い側を三人の尼さんが、黒い大きい服と糊のこわい白い塔のような頭巾を一列にそろえて足早にやって来る。キャフェのテラスでは、若い給仕《ギャルソン》たちが高くささげた大盆をたくみに肱であやつりながら、絶えず動いて、雑沓している客たちの前へ、盃を、コーヒーの茶碗をくばり、飲みもの代と一割の心づけをおいたまま行ってしまった客のテーブルに残っている受け皿から、器用に片手のひらへ心づけをあけてズボンのポケットにしまいこむ。
グラン・ブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールは金のある外国人のためのブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールとされているのに、これらの外国人たちは男も女も何と居心地よさそうにここでのパリをたのしみ、その味わいに疑いをもたずに浸っているだろう。伸子は、自分たちも新緑の美しい午後のブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールでは一つの東洋からの点景となっているド・ラ・ペイのテラス
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