ェ、五ヵ年計画第一年の成功の記念として、それぞれに、クラブの壁を飾る絵をおくられた。蒲原順二は、その一つに加わる制作として、日本のメーデーを、もとめられたわけなのだった。
 コムソモーリスカヤ・プラウダでその記事をよみ、化学労働者クラブがもらった職場の絵の下で、そこのウダールニクたちが、うれしそうに笑って写真にとられているのを見ると、蒲原順二にも、自分の制作のパスしなかった残念さが実感されるらしかった。
 彼は、じっとその新聞写真に出ている化学工場の内部を描いた画を見ていたが、何か考えが湧いたらしく、
「佐々さん」
 自分のベッドのところから伸子をよんだ。
「なあに」
 伸子は、茶テーブルの上で、ロシア語文法を勉強しているところだった。
「僕のこんどの絵ですがね、大体下絵だけは出来たんです。こんどのやつは、この前のように、仕上げてから批評してもらうのではなく、今のところでいっぺんあのひとに見て貰うのは、どうでしょう」
「その方がいいとお思いになれば、わたし、またついて行くことはかまわなくてよ」
「すみませんが、じゃ、あしたでも時間をくりあわせてもらえませんか。実は、僕として折角モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へのこしてゆく作品なんだから、出来るだけ変色なんかしない絵の具がつかいたいんです。前の一枚がふいになってしまったから画布はもらえたんですが、またしくじると、絵の具の方がちょっと痛いんです」
 伸子も素子も、蒲原自身も笑い出した。
「なるほどね、われわれの知らない苦労があるわけなんだな」
「ひとつお願いします」
 木炭で下絵の出来ているカンヴァスをもって、伸子と蒲原順二は、ふたたびプロレタリア美術家同盟の書記局を訪ねた。
「おお、タワーリシチ・カンバーラ」
 ミチェンコが、立って来た。蒲原の下げているカンヴァスを見ると、
「お見せなさい、おみせなさい」
 せっかちに、待ちどおしそうにせきたてた。カンヴァスが、板壁に立てかけられた。伸子がなぜ下絵で見せに来たかという理由を説明した。絵の具の心配について蒲原が伸子たちにうちあけたことにはふれないで。
「わるくないじゃないですか」
 彼自身一人の画家として、外国の画家の仕事を、下絵から見るということには、おもしろさがあるらしかった。
「まじめに努力してある」
 蒲原にタバコをとらせ、自分も咥《くわ》え、火をつ
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