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びっくりして出迎えた娘たちにそう云ったなり、やっと客室の長椅子にたどりついた多計代の方は見ないで、外出してしまった。
体のなかに苦しいところがあって、しゃんとかけていにくいらしく、多計代は肩をおとして、片手を長椅子のクッションの上につきながら、もう一方の手で、ものうそうに帯あげをゆるめた。
伸子は、できるだけいそいで、その帯あげをとき、袋帯をほどき、その下の伊達巻や紐類をゆるめた。おはしょりがゆるんで派手な訪問着の前褄がカーペットの上にずりおちた。
つや子がいれて来た熱い緑茶を、ゆっくりひとくちずつのみながら、多計代は、
「お前がたのお父様ってかたは、いったいどこまで見栄坊なんだろう」
苦しさはそこにあるという風に、多計代は息をきらしながら云った。
「わたしの健康より、浅井さん夫婦に気がねをする方が先なんだから、あきれたもんだ。どんなに偉いのかしらないが、さきは、若い人たちじゃないか」
浅井夫妻は、国際連盟関係でジェネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]に駐在している人々であり、泰造にとってはもともと儀礼的な知人でしかなかった。その人たちが、出迎えたり、ホテルの世話をひきうけてくれていることについて、人に迷惑をかけまいとする泰造が、出来るだけ予定を変更したがらなかったこころもちは、伸子に察しられた。
伸子は、多計代のそういう言葉にあいづちをうつ心持がなかった。足が冷えないように白い足袋の足の下にクッションをおき、寝室からもって来た羽根ぶとんで、動くのも大儀そうな多計代の体をくるんだ。
「ベッドに入っていらした方がいいんじゃない?」
しばらくして伸子がすすめると、多計代は故意に顔をそむけるようにした。
「さあさあ、とんだ御厄介をかけてすまなかったね、伸ちゃんも行くところがあるんなら、さっさと出かけておくれ」
「…………」
みんなが苦しむのは、多計代の不健康よりも、こういうこじれかただった。多計代の体がわるいことについて、家族のみんながもっている同情や心づかいの優しいこころに、多計代はいつも自分からつっかかってとげ[#「とげ」に傍点]をたてた。
「――病気が事務的に解決できるものなら、わたしだって、何もこんなに苦しみやしない」
なか一日休養して、けさ、ようやく出直しの出発だというのに――。
窓の外にふる雨を見ながら、伸子は身じまいをした。そ
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