アか中世の職人部屋の感じがただよい、そこを見てから、しばらく廊下を行って伸子が案内された指導者たちの食堂は、あんまり学生の食堂との相違がはげしくて伸子をおどろかせた。そこは天井の高い柱を見せた造りの室だった。真白いテーブル・クローズのかかった食卓の上には銀色にかがやく砂糖壺だの大小のスプーンがきちんと並んでいた。壁にはいくつもの記念写真が飾られている。婦人の案内者が重々しく発音して「|指導者たち《リーダース》」と云っているのは、どういう人たちなのだろう――云いかえれば、一方に労働者たちのためのああいう食堂をおきながら、平気でこの真白いクロースのかかったテーブルに向う無神経な指導者というのは、どういう種類のひとたちなのだろう。伸子は、そのことを質問した。案内の婦人は、その人たちは、オックスフォード大学とケイムブリッジ大学から来ます、とだけ答えた。伸子の口辺にちらりとほほ笑みが走った。旅行案内書《ベデカ》にも、それは書かれています。彼らは、教授ですかそれとも学生ですか。婦人の案内者は、白いブラウスの胸をはり出すようにして、ゆっくり、彼らの多くは学生たちです、と答えた。
 トインビー・ホールから帰る道々、伸子は胸に迫る鮮やかさと感動とをもって、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]大学の円屋根の下に記されている字を思い出した。――すべての働く者に学問を。――この一句のうちに、千万言にまさる真実があった。これこそ人類に新しくかちとられるべき美ではないだろうか。すべての働くものに学問を――真実の科学を。いつわりなく社会の現実を追求して、それを発展させる力をもつ学問を。――
 売家に出された労働学校の残務整理をして、ふとった悲しそうな顔を頬杖に支えている男に、伸子はトインビー・ホールを訪問したと話した。そして、あなたのところでも、もしあすこと同じような学科を教育していたのなら、卒業生たちがマクドナルド政府に便利な召使になるのは明瞭だと思います。トインビー・ホールの二種類の食堂がそれを語っています、と云った。肥った男は眠たそうにしていた瞼をあげて、伸子の顔を見直した。あなたは、その二つの食堂を見ましたか? 見ました。それで――あなたの気に入らなかったですか? 伸子は、ああいうやりかたは、大戦前まではある意味があったのでしょう。でも、それでは余り古いです、と云った。肥った男は
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