ミ仮名ワ、1−7−82]がどんなに新しい社会かということが一つ一つ身にしみてわかります――女の生活なんか、社会にもっている保証の程度がまるで違うんですもの」
泰造は、しばらくだまっていたが、
「それもよかろう」
と云った。
「徹底するまでいて見るのもよかろう」
伸子は非常にびっくりした。泰造は、自分の云うことが、どういうことを意味するかを知らずに云っている。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で、その社会主義の社会生活に徹底する[#「徹底する」に傍点]と云えば、階級的な自身の立場を決定するということでしかない。もちろん、泰造自身は、気のすむまでというほどの意味で云っているのだった。そうとわかってきいていながら、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の生活について徹底するまで[#「徹底するまで」に傍点]という泰造の何気ない言葉から、伸子は衝撃を感じる自分としてのこころのそよぎをもっている。自身で云ったひとことが、パリの、この夏の夜更けの露台のそばでモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]から来ている娘の、どんな思いに通じたかと知ったら、こんどは泰造が強い衝撃をうけずにいないだろう。伸子のおどろきは、自分の心の内外を感じ合わせて、深いのだった。
伸子と素子とが、ペレール四七番地のアパルトマンを出て、同じブルヴァールの並木はずれに洒落《しゃれ》た軒ランプを出している小さなホテルに部屋をとったのは、かれこれ午前一時だった。
もうすっかり灯の消されている狭い入口の廊下から、主婦に導かれて爪先さぐりに三階へのぼったその部屋は、あしたの朝になってみなければ、二つの窓が往来のどっちを向いて開いているのか、方角もわからないようにとりこめた部屋だった。二つの寝台の間の壁の上に、古風なビイドロ・ガラスの笠の電燈が灯っていた。一つのドアの奥は、この幾週間もつかわれずにあるらしい浴室だった。洗面台の水が細く出るだけだった。
いくら眼を大きくしても、鈍い光の下に重い茶色の雰囲気のどぎつくないようなその室内で、伸子は部屋着に着換えた。シーツだけが白くきわだった寝台に腰かけて伸子は今夜のあらましを素子につたえた。
「なるほどねえ。ぶこちゃんも、大分ふかいところをのぞいたっていうわけだな」
ペレールの親の家を出て来て、親子の間にとりかわされた会話について話していると、
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