トいる種族でないことを、伸子に証明した。権力の液汁を一滴でも多く同族のなかに吸収しようとして、特権階級の人々がその結婚や知人関係をとおして毛細管をはりめぐらす手腕は、日本でもフランスでも同じことなのであった。
 伸子は、親たちのそういう素朴さに好意をもっている。それだのに、今夜多計代は金のことに絡めて伸子の「何とか主義」と、さも、あるところからは何でもとる主義がこの世の中にあるように、それが共産主義だとでもいうように、世界の一定の人々の間に流布している無知な偏見を平気で口にのぼせることは、金という現実的なきっかけがあるだけに伸子をまじめにおこらせた。
「つや子ちゃん」
 伸子は露台のところにいるつや子に声をかけた。
「あなた、もう今夜はおやすみなさいよ、ね。あした来て、又リュクサンブールへでもつれて行ってあげるから……」
 つや子は誰かから自分の存在が注意されるのを待っていたように、素直に露台から客室へ入って来た。
「お姉さま、帰るまえに、ちょっとこのひとのところへよって。――いい? 忘れない?」
 伸子の頸につや子は重く両腕を巻いた。
「忘れない。――だから臥ていらっしゃい。いい子」
 両親の方を見ないで夜の挨拶をし、つや子が室を出て行った。伸子はあらたまって、多計代を主として、両親に云った。
「旅先でもあるし、お母様もごたごたしたお気持なんだろうけれど、わたし、お金のことについては、はっきりしておいて頂きたいと思うわ。これまで、随分お母様とはいろんなことで云い合ったけれど、お金について今夜のようにおっしゃったのは、はじめてなんだから。これまで実際にあったことをあったとおりに考えて見て下されば、お母様は、わたしに対して、ただの一遍だって、出すだけは黙って出せ、と云うような金をお出しになったことはなかったと思うわ。そうお思いにならない?」
 だまって多計代は顔をそむけた。
「わたしから、お金をねだったということがあったかしら。佃と結婚したとき、お母様は、自分の思うことをするのなら、経済的にもすっかり自分でやれっておっしゃったでしょう。あれは、今になってみればみるほどありがたかったと思っているんです。和一郎さんには、お母様少しちがうのよ。オートバイのときだって。ヴィクターのときだって。和一郎さんは、ねだって成功して来ているのよ。小枝ちゃんと結婚したい、とあのひとが云っ
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