同志小林の業績の評価によせて
――四月の二三の作品――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)犇々《ひしひし》と

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)虐殺[#「虐殺」に×傍点、伏字を起こした文字]は
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          一

 プロレタリア文化・文学運動の指導者、卓抜な国際的ボルシェヴィク作家同志小林多喜二の虐殺[#「虐殺」に×傍点、伏字を起こした文字]は、社会の広汎な分野に亙って少なからぬ震撼を与えた。
 三月の諸文芸時評は同志小林の小説「地区の人々」の批評とともに何らかの形で、同志小林が殺された[#「殺された」に×傍点]ことについての哀惜を表明していた。同志小林についての追想というようなものも一つならず様々の筆者によって発表された。けれどもそれ等を注意して読んで見ると、それらの文章において、同志小林の不屈な闘争によって一貫された業績の評価において、前衛としての英雄的殉難そのものの理解において諸家の意見が一致していないばかりか、遺憾ながら明らかに反動的な効果を生じるような意見も少くないのである。

 宮島新三郎氏
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