面である点から、特に注意を喚び起す。同志小林がこの点を記念碑的作品の全篇中にどう活かし得ているかということを究明することに、プロレタリア文学の次の発展への重大な歴史的モメントがかくされていると思うのである。
四
全然対蹠的な主題を扱った小説として同じ『中央公論』に同志細田民樹の「裏切者《プロヴォカートル》」がある。今日「プロヴォカートル」という言葉は逆宣伝的な意味にでも通俗化され、新語辞典に出て来る文字となった。プロレタリア作家がそのような階級的な而も卑俗化された好奇心を伴って興味をひく可能のある題材を扱う場合、何よりなすべきことは、「プロヴォカートル」というものの憎むべき本質を、飽までもプロレタリアートの立場に立って大衆の前に曝露することである。「プロヴォカートル」が、ただ裏切者であるというより更に憎むべき「挑発者」であり、今日では計画的に支配階級がプロレタリアートの組織へその破壊を目的として送り込むもの、即ち敵の組織の積極的一部であり、プロレタリアートはそれと常に闘い、一旦打撃はうけようとも終結において常にプロレタリアートが勝利するものであるという本質を明
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