ど、その賢さを、結婚生活には金のある男のひとを相手として選んだ方がよいという風な卑屈さに向けないで、職業についても、自主的な理解をもって対してゆくところまで高めてゆくときが来ていると思う。
先輩の働く女性たちがあるいは自分をただ傷つけるだけであった職業上の幻滅というものをも、これからの若いひとたちは単純に幻滅とせず、自分一身の上におこったことを、よりひろい社会の今日という背景の前において、女全体の生活の現象の一例として、深く考え、そこから何か改善のためのささやかな可能をも見出して行こうとする。そういう生活的な暖い、まめな気持が必要だと思う。職業そのものがたまらなく面白いというようなことはどんな職業にしろないと思う。たとえば谷野せつ氏の「女子労働に関する報告」を見ても、千三百十四人の工場に働いている若い女性のうち、八〇パーセントは仕事そのものについて「何の興味も持てません」と答えている。そこには、常に苦痛だの困難だのがともなっていて、いわばそれをどうもってゆくかということから女は成長して来ているのである。未来の女性のひろやかでつよく快い生活力への期待は、今日と明日の若いあまたの女性たち
前へ
次へ
全19ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング