ェーン・エーア」という作品がある。若いジェーンが生活のために職業を求めて新聞に広告をのせる。すると、何通かそれに対する手紙が来る。ジェーンは一つ一つ開いてみて、最後の一通の求人に応じて行ってみることにきめる。その手紙の内容は、ある田舎の荘園で、女主人は病弱なので家政婦が家事取締りしている。その助手と鶏舎の監督をする健康な飽きっぽくない若い婦人を求めているのであった。ジェーンは、その手紙をくりかえしてよんで考える。この手紙には何一つ特別珍しいことやとびつくような好条件というものがなくて、いかにも仕事に人を入用としているらしい手紙だ。これにきめましょう、と。ジェーンは、外の手紙がどれも何かうまいことのありそうな文句や誘うような好条件を並べているのを見て、若い着実な女性にとって本当に職業らしい職業の口ではないと直感するのであった。容貌とかその他、女性のためにかくされた危険や曖昧さのあることを感じたのである。
ずっと古く読んだ小説であるけれど、ジェーンのこの気持は働いてゆく女の心の動きかたとして、印象に刻みこまれていて消えない。日本の若い女性たちも社会的に次第に賢くなって来ているのであるけれ
前へ
次へ
全19ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング