して自分のものにしなければならないのではないだろうか。
何故ならば、来年の春からはそのようにして一層おびただしく働く女のひとが群れ立ってゆくのに、婦人の職業上の立場は実際上改善されていない。大体やっぱりこれまでどおり低い報酬と固定して向上の見とおしのない位置におかれたままの状態である。この点の改善の希望は今日深い意味をもって現れている。若い女性たちにとって、新しい職場をもった最初の心持は、どんなに珍しくいきいきと目と心を刺戟されるだろう。けれど、半年か一年経ったとき、これまでの幾万の女性たちが経験したと同じ倦怠と単調さに対する苦痛が彼女たちを襲うにちがいない。それをやっと持ちこしてからは一種の惰力で働きつづけて行くという消極のなかで若いこれからの女性は乾いて萎れて行ってはならないと思う。職業なんて、どうせこんなもんだ、そういう気分に陥っては自分の若い貴重な命に対しもったいないと思う。
明日の若い女性たちは、質実な理解で、はじめから今日の状態で職業というものはどういうものかということをちゃんと覚悟してかからなければならない。
シャロッテ・ブロンテというイギリスの女流作家の小説に「ジ
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