女自身もその重大な意味にしっかりと目を定めて学ぼうとしないで、客観的にも主観的にもとらえどころのない無責任な態度になってゆくことだと思う。
 女の職業は一時的だからといっても、その短期間でも、現代の職業がもっているあらゆる弱点は、精神的肉体的に若い女性の生活へ直接ぶつかって行って、彼女たちをその中へからみこみつつある。それなのに、若い女性たち自身心のどこかに持っている、働くのは一時的だという考えは、それらの社会的弱点に抵抗して自身を成長させて行こうとするまじめな恒久的な実力を、若いひとたちの身につけさせない。そして、若い女性たちは、職業についているという外見上の積極性にかかわらず、その実際では社会の弱点、女を扱う非条理性に負けた姿として自身をあらわしている場合が、決して私たちのまわりには少くないと思う。
 新しい年とともに、私たちは自分たちの職業というものについて、新しいモラルをうち立てなければならないのではなかろうか。これまで何千何万の若い健康な女性たちが職業について、そこで経験して来た苦痛や失望や努力、精励の価値を、さらに新しく理解して、それをもう一歩進んだ明日の女性の生きる態度と
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