的に知るからである。そして、その不自然な点や非条理なところについて、一般の女としての立場から自分にも周囲にも求めるところを自覚し、仕事に対する自分の責任を全うする努力を通じて、新しいよりよい条件を創り出して行こうとする、その積極な骨おしみをしない生きる態度を身につけるからであると思う。
生活のために働くひと、それから自分の人生に求めるところがあってある仕事につく人、それらの人々にとって、今いったような点は、痛切に感じられるにちがいない。しかし、自分としてそれほどはっきりした心の動機なしに、人ごみに押されて門をくぐるように職業の門をくぐる若い女性たちは、その点、明らさまにいって何かしらあぶなっかしいと思う。
深い責任感とか、義務を遂行するための勇気とか、女を成長させる力を真直に培われることと、職業そのものや同僚の男のひとたちに対する一種の幻滅とを比べたら、どちらがより多い比重で、それらの娘さんの胸の底にのこされるだろう。女の職業を一時的なものとみる社会の習慣の何よりの害悪は、婦人の力がこの社会の必要にとって今は全く欠くべからざるものとなって来ている現実だのに、それに対して周囲の社会も
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