しまった。細かい絣だから余りみっともなくない。
 そういう羽織を着て、体の半分をくるむような大前掛をかけて、帯は御免蒙って兵児帯である。迚《とて》もしゃんとした帯をしめて仕事をすることは出来ない。
 急にお客様があったりして、私はいつもそのまま出るのだけれど、私のような働きの性質だと、どうしても働き着即ちふだん着しか仕方がない。夏は袂を元禄袖にしているのもある。願くば、このくるみぶち付羽織だの着物だのに、せめて心持よい色彩あれ、と思っている。
 もう一つ私は妙なものを使っている。それは私のせめてものくつろぎ用、寒さしのぎ用だが、部屋着から思いついて、どてら代りに綿入元禄袖のついたけ着物のように縫ったものに、横で結ぶ紐をつけ、寝間着の上から羽織ったり、夜はふだん着の上にひっかけたりして、便利している。
 洋服暮しのとき、部屋着として少しさっぱりした縞や小紋の着物地で拵え、随分重宝してからずっともう幾冬もそれを離さない。日本の部屋で、洋装ぐらしをする女のひとは、案外そんな部屋着が役に立ち、又安楽で、しかも一寸そのまま人前に出ても大して失礼にも当らず、都合いいのではないかしら。縞や模様の気く
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