人」に傍点]の中にそういう熱い思いが生きており、弾圧されていることを知りませんでした。あるいは弾圧されるべき犯罪的行為として日本の権力者から説明されていたかもしれない。さきごろの戦争についても同様です。日本人の中には、人民の中には、終始一貫あの戦争に抗議していた者が少いけれどもちゃんと在りました。表にあらわされない抗議の精神はもっと広汎にありました。だからこそ民主主義の歩みだしがあったわけです。発言をおさえられ、おさえる力を系統的に打破してゆくことができなかった反ファシズムの心があったからこそこの日本で、今日世界の平和に役立とうとする熱情があるのです。
 かつてはグルーの知ることのできなかった日本人民の意志を、人民として世界に共通な平和と民主生活の確立のための意慾を、私たちはすべての国の人民の実感と結合させなければなりません。私たち一人一人の胸にある思いそのものが、大小の反ファシズムの動きの一つ一つが世界の全人民の思いと行動とに通じているという事実について確信を持つべきだと思います。
 さっき藤森さんが提案されたように、この大会を機会に世界の民主的文学団体へ向って私たちのメッセージを送
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