を存在させないためには、その存在を欲しない人民の意志が文学を含む社会現象の全面に主張され、実現されなければなりません。民主主義文学が順調な発展を遂げてゆくこと、そのために私たちは骨をおしまず勇気をもって働くこと、それ以外に私たちの嫌いな権力的狂暴を封殺するものはありません。そのために必要な骨格は、民主主義文学についてのしっかりした過去と未来を見渡す能力のある理論と創作です。
 治安維持法的コンプレックスは退治してしまわなければだめです。実はそのコンプレックスで感情を刺戟されるのに、そのことにはふれず、何か外部からの強権を反撥しでもするようなすねかたをすることは、止めるべきだと思います。
 民主主義文学の最大の課題は、基盤となる階級の革命的成長とともに、ブルジョア文学の伝統である「私小説」から「私」を人民の文学の中へ解放することです。ブルジョア的な観念の中で主張される自我、個々なる個性が、現代の現実の中でその正当な発展的存在を守ろうとすれば、それはより広い人民的環境と行動の中に自身をおく以外に方法がないことは『近代文学』の人々がこの頃はっきり反ファシズムの線に乗り出してきたことをみても分
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