て一緒に暮すようにしてはどうかと云った。
「こう云って来てもいるしするからね」
六十八になっている信輔の手紙を見せた。それには、道子にとっては思い設けないことに、もし我々二人の老人が上京することが道子どのの生活が落付いてよろしいと申すならば、よろこんで出京致すつもり云々と書かれている。
「そちらから何とかお手紙をお出しになりましたの?」
「どうもその方がよかろうと考えてね。あんたも一人じゃなかなか楽じゃあるまいと思うし……」
両親にたいして特別やさしい感情をもっている啓三が、親たちを呼びたいと云っていたのは二三年来のことであった。
「お呼びすることは啓さんも云っていたことなんだけれど――どうかしら――何しろ私は御承知のとおり朝九時頃からおそいときは夜まで外なんですものね、お年よりのお世話をして上げたくても、とてもまわらないので却って悪いと思うんですけれど……」
信一は、
「ハハハハ」と、闊達そうに白ズボンの膝をゆすって笑った。
「何もそう嫁さん気質を出さんでもいいじゃないですか」
「そういうわけじゃないけど」
小ぢんまりした素顔に道子も苦笑を浮べた。
「やっぱり私だっていらした
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