中に輝きわたる。
そして、守霊は無言のうちに、生きることの美くしさ、努力の光栄を、彼女の魂に吹きこむのである。
神よ、我に不断の力を与え給え……。
明日という日が、また希望を盛り返す。
彼女は、もう決して辛いものではなくなった独りのうちに静かに浸って、与えられた自らの生命の多種多様な力の現れと、僅かずつ育って行く心とに、謙譲な愛に満ちた奉仕を感じるのであった。
かようにして、箇我のうちにまったく閉じこもった彼女の生活は、ちょうど曇った夏の夜のような様子で過ぎて行った。折々鋭い稲妻の閃光が暗い闇を劈《さ》いて一瞬の間、周囲を青白い輝きの中に包みはしても、光りの消えたと同時に、またその暗い闇がすべてを領してしまう。
それと同様に、ときどきは、いかほど熾《さか》んな感激の焔に照らされはしても、彼女の生活の元来は暗かった。そして、夏の夜がそうである通りに、闇とはいっても、微かにおぼろに、物の形、姿だけは浮んで見えるほの明りに足元をさぐりさぐり、彼女はより明るみへ、より輝きへと、歩を向けて行っていたのである。
そして、彼女の心附かないうちに、生活の律動は、読み物の影響と、或る程度
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