も、きっと幾度かは殆ど不可抗力に近い重みをもって垂れそうになって来る通りに、彼女のちっとも緩みのない心、休息を与えられることのない心は、ときどき息が詰りそうな陰鬱を伴って沈んで来る。
何の音もしない、何の色もない、すべての刺戟から庇護された隠遁所を求めて、悲しく四方を見まわし、萎《な》え麻痺《しび》れるようになった頭が、今にも恐ろしい断念をもって垂れそうになって来ることもある。
けれども、そういうもう一歩という際で、彼女にまた新らしい勇気と、感激とを与えて、より雑多な刺戟の中へ振返らせるものが、彼女の感受するいろいろな感動を透した上の方から、いつも朝暁のようにすがすがしい、なごやかな力に満ちた新鮮な空気を送ってよこすものがあった。
そのものは何なのか、彼女には解らない。
何だかは知らないが、偉大な魂を感じ得る「心持」を与えられた彼女は、その自分が神と呼び、守霊と呼びかけて、人と人との交渉においては、どうしても満たされない絶対的服従の渇仰と、愛情とを傾け尽して敬愛しているものをも、やはり或る一つの「心持」を感じるのだとほか云いようがなかったのである。
そして、その「心持」は明か
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